竹の活用と時代背景
食卓に春の訪れを感じさせてくれるたけのこ、軽くてしなやかな竹製品など、竹は日本人にとって身近な資源である。カゴやザルなどの日用品のほか、和の文化である茶道の道具にも竹製品が利用されてきた。また、たけのこは古事記に記述があり、奈良時代の竹製品が正倉院に保存されていたり、当時の遺跡に排水溝に利用されたと見られる竹が発見されている。このように、竹は古の時代より我々の暮らしに役立てられてきた。しかしながら、竹製品がプラスチック製品などで代替されるとともに、竹材や竹製品、たけのこの輸入が増加し、生産者が高齢化してきたこともあり、国内における竹材、たけのこの両方の生産が衰退していった。
竹林問題の現状
竹稈(ちくかん)は短期間で成長するが、その後、光合成により得られた有機成分はそれぞれの稈の直径・稈高の成長に充てられるのではなく地下茎に蓄えられ、地下茎が伸びて新たなたけのこの発生から稈の成長に充てられる。このことは、個々の樹木が集合した森林とは異なる。また、竹林だけでなく、周囲の森林にも人手が入りにくくなったことから、森林に入った竹の伐採等の手入れがなされないため竹林が拡大していく。これが周辺への竹の侵入の原因であり、元の植生の衰退により森林の公益的機能の発揮に支障を生じることも懸念されている。
竹利用と解決策
こうしたことから、竹を利用することで竹林・森林整備への関心を高めることが竹問題の解決の一つの方法であり、従来とは異なる新たなアプローチで竹の利用を進める動きが見られ始めている。例えば、竹をパルプ原料にしたマテリアル利用や、バイオマス発電燃料としての利用である。こうした新たな取組を進めるためには、竹林の整備と竹の利用が総合的に可能な仕組みづくりが重要である。
竹の加工には、上記のような新たな取り組みの他、竹の炭化という方法もある。通常竹炭を焼くには、土釜という方法が一般的だが、その管理には熟練の技や経験が必要とされるが、誰にでも簡単に、手軽な炭化装置を活用した竹炭や竹酢液という活用方法もある。
竹炭
竹炭は、木炭よりもカリウムやナトリウム等のミネラル成分が非常に多く含まれており、さらに多孔質であるため、土壌改良効果や消臭効果に優れている。近年、土壌改良資材や消臭剤としての利用が増え、更なる利用促進が期待されている。なお、我が国における竹炭の生産量は平成 28(2016)年で 411 トンとなっており、消費量の約 95%を輸入品が占めている。
竹炭の国内生産量と輸入量の推移
竹酢液
竹材を炭化する際の煙から採取した竹酢液は、その 80~90%は水分で、残りの 10~20%が有機化合物であり、酸類、アルコール類、フェノール類等の成分で構成されている。主に土壌改良用や消臭用等として利用されている。また、竹酢液の生産量は、平成 15(2003)年まで増加傾向で推移していたが、同年の農薬取締法改正により農薬指定の規制が厳格化されたことから、対象から除外され減少していたが、近年は約 200 ㎘程度で推移している。
竹酢液の国内生産量の推移